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8 非常階段近くの…
マジか!訳わかんない。
「あの…コインロッカーなんで、入れるにはお金がかかりますよね?小銭とかも用意して…。」
「それも、マスターからもらってない?ベージュの小物入れ。それと往復の交通費とバイト代は、終わり次第、お渡ししますので安心してくださいねぇ。ちなみに、往復の交通費はどれくらいかなぁ?」
バイト代は終わり次第か。
「往復で420円です。…あの…荷物って、どういう…。」
「ん~いろいろなんだよねぇ。ちょっと中は秘密…なんだけど、持てない程の大きさや、重さはないから運べると思うよ。…何か不安かな?」
いや、正直、聞くのも戸惑ったが、その答えは想定内だったとはいえ、どうしても不安感に襲われる。
やっぱり〝ヤバいもの〟なのだろうか…。今さらビビってもやるしかない。
「いえ。大丈夫です。この荷物をデパ地下のロッカーへ移動するんですね。他に、何か注意事項とかありますか?」
「あ!忘れるところだった。北口のロッカーは、空のまま鍵をかけて、鍵は持っていてくれるかなぁ。デパ地下に着いたら、連絡してねぇ。」
ロッカーの中には、少し大きめのデパートの紙袋が入っていた。
周囲を確認して、ロッカーから出すと、紙袋は無造作に空いていた。
最初、紙袋の中を見ない選択をした。
だから、紙袋とカギを出して、リュックからベージュの小物入れを探し、小銭を投入して、北口のロッカーを施錠した。
…でも、気になる。
紙袋は重くない…そっと覗いてみた。紙袋の中には、500mlの牛乳パックくらいの箱が、1つだけ入っていた。
中の箱のサイズに合っていない紙袋だった。
サイズの合わない紙袋の中で、その箱はちょこんとしていた。
…何コレ⁈普通過ぎない?
そんな拍子抜けした印象をうけた。…重くもないし、変な音もしない。
考えても仕方ないので、荷物を持って、足早にデパ地下へ向かって歩いた。
デパートへ入ると、休日のせいか混雑していた。
私は近くにあったエレベーターではなく、あえて人目のあるエスカレーターで地下まで下りた。フロアーの案内板には、2ヶ所のコインロッカーがあった。
私はスマホで連絡し、確認した。
どうやら目的のコインロッカーは、非常階段の近くにあった。
他よりも少しひんやりとした空気と、人の流れが少ない場所なので、静かだった。
ロッカーの前まで来たが、全て使用中だった。
「今、デパートの非常階段近くのロッカーに着いたんですが、全部使用中なんです。どうしますか?」
「ん?あ~その紙袋の中に、鍵が入ってないかなぁ?」
え?覗いた時にはなかったような…。
「少し待って貰えますか?確認します。」
紙袋に手を入れ、箱を取り出してみると、その下にカギはあった。
箱が軽かったため、カギが下に入り込んでしまったようだ。
「カギ、ありました。では、このロッカーに紙袋ごと入れればいいですか?」
なんだ…心配するようなことなかった。コレなら誰でも出来る。
そう安易に思った私が甘かった…。
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