8 非常階段近くの…

1/1
前へ
/37ページ
次へ

8 非常階段近くの…

 マジか!訳わかんない。 「あの…コインロッカーなんで、入れるにはお金がかかりますよね?小銭とかも用意して…。」 「それも、マスターからもらってない?ベージュの小物入れ。それと往復の交通費とバイト代は、終わり次第、お渡ししますので安心してくださいねぇ。ちなみに、往復の交通費はどれくらいかなぁ?」 バイト代は終わり次第か。 「往復で420円です。…あの…荷物って、どういう…。」 「ん~いろいろなんだよねぇ。ちょっと中は秘密…なんだけど、持てない程の大きさや、重さはないから運べると思うよ。…何か不安かな?」  いや、正直、聞くのも戸惑ったが、その答えは想定内だったとはいえ、どうしても不安感に襲われる。  やっぱり〝ヤバいもの〟なのだろうか…。今さらビビってもやるしかない。 「いえ。大丈夫です。この荷物をデパ地下のロッカーへ移動するんですね。他に、何か注意事項とかありますか?」 「あ!忘れるところだった。北口のロッカーは、空のまま鍵をかけて、鍵は持っていてくれるかなぁ。デパ地下に着いたら、連絡してねぇ。」  ロッカーの中には、少し大きめのデパートの紙袋が入っていた。 周囲を確認して、ロッカーから出すと、紙袋は無造作に空いていた。  最初、紙袋の中を見ない選択をした。 だから、紙袋とカギを出して、リュックからベージュの小物入れを探し、小銭を投入して、北口のロッカーを施錠した。  …でも、気になる。 紙袋は重くない…そっと覗いてみた。紙袋の中には、500mlの牛乳パックくらいの箱が、1つだけ入っていた。  中の箱のサイズに合っていない紙袋だった。 サイズの合わない紙袋の中で、その箱はちょこんとしていた。  …何コレ⁈普通過ぎない? そんな拍子抜けした印象をうけた。…重くもないし、変な音もしない。  考えても仕方ないので、荷物を持って、足早にデパ地下へ向かって歩いた。  デパートへ入ると、休日のせいか混雑していた。 私は近くにあったエレベーターではなく、あえて人目のあるエスカレーターで地下まで下りた。フロアーの案内板には、2ヶ所のコインロッカーがあった。  私はスマホで連絡し、確認した。 どうやら目的のコインロッカーは、非常階段の近くにあった。 他よりも少しひんやりとした空気と、人の流れが少ない場所なので、静かだった。  ロッカーの前まで来たが、全て使用中だった。 「今、デパートの非常階段近くのロッカーに着いたんですが、全部使用中なんです。どうしますか?」 「ん?あ~その紙袋の中に、鍵が入ってないかなぁ?」 え?覗いた時にはなかったような…。 「少し待って貰えますか?確認します。」 紙袋に手を入れ、箱を取り出してみると、その下にカギはあった。 箱が軽かったため、カギが下に入り込んでしまったようだ。 「カギ、ありました。では、このロッカーに紙袋ごと入れればいいですか?」 なんだ…心配するようなことなかった。コレなら誰でも出来る。  そう安易に思った私が甘かった…。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加