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9 Love&Peace
てっきり北口の荷物を、デパ地下のロッカーに入れて終了だと思った。
だが指示によると、北口の紙袋の中にあったカギで、デパ地下のロッカーを開けて、既にその中にある荷物と置いてあるカギを出し、持って来た北口の紙袋をロッカーに入れて、施錠する。
今、デパ地下のロッカーから出した紙袋に、施錠したカギを入れる。
つまり私は、空のまま施錠した〝北口のカギ〟を言われた通りにリュックに入れて保管し、今は、デパ地下のロッカーのカギが入った〝デパ地下の荷物〟と、次に向かう〝ロッカーのカギ〟を持っていた。
そして、北口のときと同様に、私はこっそりと荷物のチェックをした。
今回は無地の紙袋に、4㎝ぐらいの厚みがある長方形の箱が入っていた。
〝北口のもの〟よりかは少し重いようだが、やはり音もなく、匂いもしなかった。
次はデパートを出て、大通りを進み、ゲームセンターとコインランドリーの間にあるコインロッカーだった。
〝怪しい荷物〟を持ったことで、周囲が気になり、誰が見ても挙動不審な動きをしていた。今なら間違いなく、職務質問を受けられるだろう。
しかし、大通りで人目があっても、すれ違う人や、後ろを歩いてくる人、道路を挟んだ歩道でこっちを見ている人、みんな怪しく思えた。
そのコインロッカーは、すぐに分かるところにあった。
ロッカーの前面には、どう見ても無許可で落書きされた文字があった。
少し斜めで、大胆な色遣いで〝Love&Peace〟と書かれていた。
私はスマホを手にしたが、休日のゲームセンターもコインランドリーも、人の出入りが多く、落ち着いて指示を受けられそうになかったので、近くの自販機に背を預け、しっかりと紙袋を抱え、連絡を入れた。
指示の内容は、デパ地下のときと同様で、ロッカーの中に入っている荷物を出して、持って来た紙袋を入れ、カギをかける。
ロッカーにあった荷物を持ち、施錠したカギを持って、次の指示された場所へ向かう。というものだった。
ただ今回の荷物は、今までのものとは違っていた。
ロッカーから出したのは、少し古びたテディベアだった。
袋に入っている訳でもなく、ロッカーにポツンと座っていた。ロッカー内には、他のものは何もなかった。
つまり今回の荷物は、コレなのだろう。
私はテディベアを抱え、このロッカーにデパ地下の荷物を入れ、施錠すると、次のロッカーへと向かうことにした。
指示された場所は、その通りを進み、工事現場を曲がり、お弁当屋さんの先を左へ曲がった、ピンクのコインロッカーだった。
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