動かざる鉄の塔

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動かざる鉄の塔

男の子たちが遊んでいる公園でよく一緒に遊んだものだ。膝を擦り剥いた男の子が痛そうにしているのを見ては痛いのか痛くないのか分からなかった。それは男の子たちがはったりを使っているから。そんなもんだろう。だけど麻衣にはそれが自分に好意をもっていてそれが弱みを見せまいとするアクションと。顔だけ笑ってみせた。気を引いてかっこつけたのだということがわからなかったのだ。それはずっと不思議な感情として残っている。なぜかきらきらした目は美しかったものだ。それと鉄棒でできた遊具は鈍磨で無表情で怖さを思わせる。不思議とそれは今までその存在を忘れるくらい一緒に遊んでくれていたのだ。動かざる鉄の塔。麻衣はまた子供を怪我させてしまった。友達をだ。「子供」。そう思えるほど麻衣は鉄でできた塔を聳え立つ「自分側にあるもの」だと思っていたのだ。なぜこの巨人はときどき人を撥ね付けるのだろうか。もちろん子供の麻衣がはっきりとした認識でそう思っていたわけではない。だからただわかっていたのはそこから弾かれた男友達に・手を差し伸べちゃいけない・ということだった。そしてそのときの顔は美しい。そうあってほしい。ということだった。
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