聖なる夜、恋せよ青年

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◇宴のあと、メリークリスマス◇ 「可愛い子だね」  洗い物を布巾で拭う奏人が微笑しながら言う。小椋が自分のスーツに着替えて、何度も頭を下げながら帰った後、暁斗は奏人と昼食の片づけをしていた。  駅の近くの洋菓子店で予約したブッシュ・ド・ノエルは、暁斗が探していた「巷で評判のお高い目のクリスマスケーキ」ではなかったが、素朴な甘さが良かった。意外と大きかったので、3人で紅茶と一緒に食べた後、残りを夜に食べることにして、小椋にも持たせてやった。 「ちょっといろいろ世話を焼き過ぎたかな、週明けに恐縮して礼を言って来る姿が目に浮かぶよ」  暁斗がスポンジの泡を流しながら言うと、いいんじゃないかな、と奏人は応じる。 「だって社会人1年目の子なんて、大学生みたいなもんじゃない? 僕は奈良で1回生と2回生しか教えてないけど、何だかあまり変わらない感じがした」 「まあそうだとは思う、仕事はしっかりし始めても、プライベートはなぁ」 「憧れの桂山課長の家で過ごせて、きっと心に残るクリスマスになったはずだよ」  暁斗は奏人が小椋を学生のように見做していたと知り、なるほどと思った。奏人が年下の者や後輩の面倒見が良いのは、おそらくゲイ専デリヘルにいた頃からだ。学生に接するようになり、それに磨きがかかっているらしい。 「奏人さんどう思った? 小椋が俺をどう思ってるかはともかく、男が好きなのかなと俺は感じたんだけど」  タオルで手を拭いて、暁斗は自分も布巾を取る。拭かなくてはいけないものは、もう残り少なかった。  奏人は暁斗を意味ありげな横目でちらりと見上げた。こういう顔をすると、10歳年下の恋人は、今でも変に色っぽい。 「うん、僕もあの子はゲイだと思う……もう自覚してるよ、たぶん」
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