聖なる夜、恋せよ青年

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 陽佑は自分の部屋に戻り、桂山に持たせてもらった唐揚げとケーキの残りを、冷蔵庫に入れた。夢のような時間だったし、それが終わってしまったのは悲しいけれど、心の中は温かい。  ふと、さっきからLINEをくれている望月に、無事帰宅した旨を伝えておこうと思った。 「心配かけてごめん、今帰った」  メッセージを送信すると、即レスに陽佑は驚かされる。 「良かった、お疲れさま」  陽佑もすぐに返してやる。 「別に疲れてないよ、桂山課長とパートナーさんにめちゃくちゃ良くしてもらった」 「課長のパートナーさん、どんな人だった?」  望月がそんなことに興味があるとは、何となく意外な気がした。しかし、高崎をどんな人と表現すればいいのか、難しいと思う。 「噂通り美人で、絵がめちゃくちゃ上手でインスタでつながってもらった」 「小椋インスタやってるの?」  ああそうか。会社の人間に、写真を撮る話をしたことがない。陽佑は自分が学生時代から、ちょっとばかり写真をSNSでアップしている話を望月にしてやった。彼は意外にも興味を示し、写真の話を聞きたそうなニュアンスを出してきた。 「俺ぼっちだし夕飯食わね? 疲れてるならいい」  別に疲れてはいないが、確か望月は浅草辺りに住んでいる筈だ。何処で落ち合うことを想定しているのだろう。それに、今日中に食べなくてはいけないものがあった。 「課長が作った唐揚げと、持たせてくれたクリスマスケーキがあるんだけど」 「何それ食べたい、俺が大井町まで行くから駅まで迎えに来て」  いつになく望月が積極的なので、陽佑はスマホ片手に首を傾げた。まあいいか、あいつも彼女いないから、クリぼっちが嫌なんだろうな。  陽佑は了解、と書いたスタンプを望月に送った。男2人で食べるなら、どっちみち鶏もケーキも足りない。食べ物は駅前で買い足そう……でも酒はやめておこう。望月とのやり取りが終わり、陽佑は掃除機を出した。この部屋に人を呼ぶのは、よく考えると初めてである。  課長と高崎さんのようにはいかないけれど、せいぜいもてなしてやろう。陽佑は気の良い同僚の顔を思い出しながら、掃除機のコードをコンセントに挿した。 ******************* 連載開始が遅かったので、クリスマスどころかもう年末になってしまいました! しかも本日、私も昼間に忘年会がありまして、ワインを飲み過ぎて投稿予約を忘れていました……大変失礼いたしました。 昨年のクリスマスバージョンと同様、今年も第三者視点の暁斗と奏人を取り交ぜてみました。「暁斗に恋する新入社員」というネタはずっと抱えていたものでしたので、やっと文字にできて良かったです。 2022年の後日談集は、これにて完結です。今年も暁斗と奏人におつきあいくださり、ほんとうにありがとうございました! オンタイムで読んでくださっている皆様、どうぞ良いお年をお迎えください! 2022.12.28 穂祥舞
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