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ニュースによると、18歳から選挙権を持つことができるようになったので、今年の成人式には、自治体によっては18歳から20歳までの人が集うということだった。暁斗が卒業した大学のテニス部の同期の中には、子どもが高校生になっている者もいる。来年あたり、うちの子が成人式に行ってきたという報告も出てきそうで、暁斗は何とも言えない気分になる。一つ目は「年を取ったな」、二つ目は「子どもがいたらどうだったかな」、といったところだ。
銀座で買い物がてらぷらぷらしていた暁斗と奏人は、喫茶店に入った。店内にちらほら座っている晴れ着姿の若い女性たちに、しばし目をやる。慣れない長い袖を押さえながら、彼女らはパフェにスプーンを向けて笑い、スマートフォンで自撮りしていた。
奏人は振袖の女の子たちを見て、綺麗だね、と言った。
「女性は思いっきりおめかしできる日が、人生に何度かあっていいよね」
奏人が羨ましそうなのが、少し可笑しい。暁斗は話を継いだ。
「成人式と何? 結婚式か」
「そうそう」
「奏人さんは成人式は? 何を着て出たの?」
暁斗の問いに、奏人は苦笑した。
「僕は帰省しない学生でしたので、成人式にも出席しておりません」
「えっ、成人式にも帰らなかったのか」
暁斗は連れ合いが長らく実家との関係を拗らせていたことを認知していたが、大学の4年間で彼が北海道に帰ったのは、急死した父親の葬儀の日だけだったと聞き、しばし言葉を失った。昨年末も暁斗は奏人の実家に赴き、彼の母と弟と、和気藹々と過ごすことができた。一昨年は何となく漂っていた緊張感も、もう感じられなかった。それだけに、かつてそこまで関係が悪かったことが想像できない。
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