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またこの子はいたずらをしている、と靄のかかったままの脳内で考えを巡らせる。お菓子を与えた筈なのに。駅前の菓子店で並んで買ったかぼちゃのプリン。1個じゃ足りなかったかな、クッキーも買えばよかった。
とりあえず腕の中に捕えた。それは温かくて背中も肩もすべすべしていて、触れた胸からどきどきしているのが伝わってくるのが、ただ愛おしい。目を閉じたまま首を巡らせ、唇を触れたものに押しつける。奏人のこめかみの辺りかと思う。背中に置いていた手をゆるりと持ち上げ、柔らかい髪の中に指を入れた。上等な絹がまとわりつくような感触が心地良くて、思わず大きく息をつく。
数時間前にお互いが放出した体液の匂いはもう薄まっていて、暁斗の鼻孔をくすぐるのは、奏人の肌と髪の匂いだ。肺一杯にそれを吸い込み、抱きしめているものをより強く拘束してみる。毎晩こんな風に彼を囲い込むことができるなんて、未だに夢を見ているようで、夢ならいつまでも覚めないで欲しいと思う。
奏人が身じろぎするので、少し腕の力を緩めた。体温が逃げてしまわない程度に。すると奏人の細い腕のほうに力が入った。暁斗は少し目を開き、彼の顔を覗き込もうとした。ちらりとその目がこちらを見上げ、また瞼を落とした。可愛らしくて、少し笑う。
どちらともなく呼吸を合わせる。同じリズムで、吸って、吐く。自分自身よりも大切な存在と、こうやってひとつになる。
あなたは俺の命そのもの、そして何よりも大切な宝物。
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