229人が本棚に入れています
本棚に追加
夕飯はキムチ鍋にした。賞味期限の近いソーセージをどさくさに紛れて投入しておくと、それを見つけた奏人が小鉢に移した。彼はソーセージを咥えたかと思うと、それを暁斗に向かって突き出してきた。暁斗は笑う。
「お行儀が悪いですよ」
奏人はうーうー、と変な声を出しながら、暁斗に督促する。
「えーっ、マジなの!」
「ふんふん」
暁斗は仕方なく、ソーセージの端に歯を当てた。プチッと微かな音がしてそれが千切れ、唇がむぎゅっと重なった。
「……んんっ!」
奏人に首を押さえつけられて、暁斗は呻いた。口の中で転がるソーセージが熱いので、息を止めてしまう。
唇を解放され、暁斗はぷはっと息を吐いた。奏人は笑顔で口をもぐもぐさせる。
「……上書きできた?」
「ん、十分だよ」
暁斗はソーセージを飲み下し、嬉し気な奏人に答えて幸福を感じた。アメリカの大学院の仲間たちが一目置く知性を持ちながら、こんな子どもっぽい遊びに大喜びする、10歳年下の可愛い恋人。
俺は奏人さんのことを、まだまだ良く知らない。しかしそれは不安や不快感を催す思いではなかった。お互いを知っていく過程は楽しく、愛おしい。
白菜を美味しそうに頬張る奏人を見ながら、細長いものは当分、チュー食べしないといけなさそうだなと暁斗は思った。
最初のコメントを投稿しよう!