ポッキーの日

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 夕飯はキムチ鍋にした。賞味期限の近いソーセージをどさくさに紛れて投入しておくと、それを見つけた奏人が小鉢に移した。彼はソーセージを咥えたかと思うと、それを暁斗に向かって突き出してきた。暁斗は笑う。 「お行儀が悪いですよ」  奏人はうーうー、と変な声を出しながら、暁斗に督促する。 「えーっ、マジなの!」 「ふんふん」  暁斗は仕方なく、ソーセージの端に歯を当てた。プチッと微かな音がしてそれが千切れ、唇がむぎゅっと重なった。 「……んんっ!」  奏人に首を押さえつけられて、暁斗は(うめ)いた。口の中で転がるソーセージが熱いので、息を止めてしまう。  唇を解放され、暁斗はぷはっと息を吐いた。奏人は笑顔で口をもぐもぐさせる。 「……上書きできた?」 「ん、十分だよ」  暁斗はソーセージを飲み下し、嬉し気な奏人に答えて幸福を感じた。アメリカの大学院の仲間たちが一目置く知性を持ちながら、こんな子どもっぽい遊びに大喜びする、10歳年下の可愛い恋人。  俺は奏人さんのことを、まだまだ良く知らない。しかしそれは不安や不快感を催す思いではなかった。お互いを知っていく過程は楽しく、愛おしい。  白菜を美味しそうに頬張る奏人を見ながら、細長いものは当分、チュー食べしないといけなさそうだなと暁斗は思った。
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