ー純ー

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 学食の入り口の前で誰かとぶつかる。構ってはいられなかった。購買の自動ドアが開いて誰かが出てきた時には辛うじて避けた。子どもたちの後ろ側から、目は侑とアイツに貼り付いていた。  侑は女の友だちと一緒に奴と対峙していた。顔が真っ青だ。白い顔がますます色を失っている。4,5人の学生が立ち止まって成り行きを見ているようだった。学生たちの後ろに回り込む。侑に腕を組んだ友だちが何か言うのが分かった。 「俺? 侑の彼氏。知らなかった? 経済学部3年。もう付き合って半年になるんだけど。」  はっきり聞こえた奴の言葉。頭に血が昇るのが分かった。いつの間にか目の前の学生を押し退けるようにして、奴に近づいていた。 「悪いな。侑の彼氏は俺だ。オイ、こんな所で何やってんだ。」  奴の肩を引っ張り顔を拝む。奴が目に見えて狼狽えていくのが分かった。馬鹿が。 「あ、あっ、あっ……。」 「もう侑とは関わるなと言ったのを忘れたのか? どこででもって言ったよなぁ。何、そんなに未練があるわけ? 生憎、もう侑は俺のモノなんだけど。」  自然と言葉が出てきていた。侑を見る。2日ぶりの侑の……顔。自然と引き寄せられていた。侑の顎に手をかけて唇を奪う。この香り。この香りだ。……俺が求めていたもの。 『俺は、俺は……侑を……。』  愛おしい気持ちが溢れ出す。いつの間にか気になっていた。最初は分からなかった、でも同じだ。男でも女でも関係ない。この侑自身を愛しているんだ。抵抗しない侑……俺と同じ気持ちだって、思っていてもいいか? 「そこのお嬢さんたち、侑の友だち?」 「「はいっ!」」  唇を離すと侑の顔が真っ赤に染まっていた。この顔は誰にも見せるわけにはいかんだろ。俺の腕の中に侑を隠す。 「悪いな。この侑の元カレ、しつこくてさ。大学にいる時はコイツのこと見張っていてくれる?」 「「はいっ。」」  侑と一緒にいた女2人が驚いた顔でこちらを見ていたが、俺の言葉にすぐに笑顔で反応してくれた。その途端、元カレが走り出した。周りから笑いが起こる。馬鹿野郎。これで終わりだ。奴はずっと走り続け、どんどん小さくなって見えなくなった。 「侑?」  顔を覗き込むと、キラキラと吸い込まれるような瞳が見えた。もう一度キスしたい。でもここは大学。理性を総動員して衝動を抑え込む。 「これから授業? できれば一緒に帰らないか? 送るよ。」  微かに頷く侑に歓喜する。侑も俺と一緒の気持ちに違いない。手をそっと掴んで駐車場へ向かって歩き出す。周りの騒めきが、自分たちを祝福しているように感じた。  
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