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ありがとう、さようなら
そして、一ヶ月が過ぎ、秋から冬に変わった。
いつもの朝会。教室を暖めるのは、教室の隅においてある、一台の暖炉。
「今日は…ルマ、ダージー、ニコラス。君たちがこの収容所を出ることになった」
マルク先生は、たしかにそう言った。
そして僕の隣りに座っていたニコラスとルマが立ち上がった。
「ダージー、ほら」
「うん…」
ルマに手を差し伸べられ、僕は立ち上がった。
僕達3人は前に行き、一列に並んだ。
「荷造りができ次第、君たちにお迎えがくる」
「はい」
僕達3人は返事をし、自分たちの部屋にそれぞれ向かった。
「今日で、お別れか」
服、写真、色んなものをカバンに詰め込んでいく。
荷物がなくなり、綺麗になった部屋は、なんだか寂しく感じた。
「よし」
涙なんか流さない。行くことを拒まない。
自分たちの運命を変えることなどできないことを、一番知ってはずじゃないか。
ドアを開いて、部屋を眺める。
もうこれで、最後だ。
ガチャっと、ドアを閉める。
そして僕は、うつらうつらに光る電気が照らす廊下を歩いていく。
さようなら、みんな。
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