ごめんなさい

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ごめんなさい

「ルマがいなくなった!なにか知っている人は先生たちの元へ来て!」 ガラッとドアを開け、大きな声でそう叫んだ先生。 ルマが…いなくなった!? 「先生!どういう事!?」 「ダージー、なにか知ってるのか!?」 …さっきまで、ほんのさっきまで一緒にいた。 「ルマとさっきまでいたんだ。 近くの大きな木のところで。でも僕、先に帰っちゃって…」 「分かった。また何か思い出したら言ってくれ」 そう言って先生はドアも閉めずに走り出す。 今までなんともなくはしゃいでいた仲間たちは、急に静まり返り、沈黙が続く。 あの時、突き放さなかたら…。一緒に帰っていたら。 僕は急いで、一緒にいた大きな木の元へ向かった。 外はもう薄暗く、大きな木が巨大な男に見える。 木のしたに誰かがいる気配がした。 もしかしたらルマっ…。 急いで向かう。しかしそこにいたのは、マルク先生だった。 「ダージーかい?」 「マルク先生、どうして」 息を荒げながらも、マルク先生に聞く。 「お祈りだよ。ルマが見つかるように。 この大きな木は、ただの大きな木じゃない。神様がいる木なんだ」 そして先生は、手を合わせる。 「どうか、ルマを見つけて下さい」 必死に願う先生を見て、僕の目から大粒の涙が出てきた。 「ごめんなさい先生。僕、ルマのこと突き放しちゃった」 先生は振り向く。 「僕が一緒に帰っていたら、突き放さなかったら、ルマは今もいたはずなのに…。ごめんなさい」 マルク先生は僕を優しく抱きしめる。 「そうかい、わかった。 何かあったか言ってくれるかい?」 僕は先生の腕の中で静かに、コクリとうなずいた。
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