どうせ

1/1
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

どうせ

下人(げにん)。それは『人間よりも地位の低い者』を指す。 現在、人間と幽霊が共に生活をすることが可能になった世の中。 しかし幽霊は『下人』として扱われ、家事や洗濯など、日常生活のすべてを行わされこき使われる。 そんな下人たちが集まる場所は、『下人収容所』と呼ばれるところで収容され、雇い主が来るまで下人同士で生活をする。 下人収容所は山の中にある。 その先には、一本のそれは大きな大きな木がある。 「ねぇ、ダージー。人間ってどんな者なのかしら」 輝かしいものを想像しながら、ルマは木の幹に乗りながら言う。 「きっと、色んな顔がいるのね、私たちと同じような」 ルマ・ハウン。彼女は下人であり、幽霊である。 「何言ってるんだよ、知ってるだろ。下人は人間より地位が低いから、どうせ邪魔者扱いされる」 そう言って僕は、地面に落ちている木の枝を踏み折る。 僕の名前はダージー・イルン。僕も下人で幽霊。 僕とルマは、『下人収容所』に住んでいる、というか一時的にいる。 まだ僕達は14歳。15歳になれば、命令が出され、人間たちの元へ行かされる。 「なんでそんなひどいことを言うのよダージー。人間といっても、きっといい人はたくさんいるわ」 幹からおりたルマは笑っていった。 …そんなものがあるものか。 「ルマ、シヘルの手紙を読んだだろ。 『毎日が大変で、疲れたよ。もう一度君たちに会いたい』って。 僕達はここを出たら、絶対幸せになれない」 夢なんて見てられない。理想なんて考えるな。 そうすれば、期待も幸せを願うことなく、人間たちの元へ行ける。 「もうダージーったら!」 そう言ってルマは、先に帰ってしまった。 「何をやってるんだい?」 後ろから声がした。 「…マルク先生!」 それは、下人収容所の所長のマルク・ニンジ先生だった。 マルク先生は、僕達にお話をしてくれる。 マルク先生は人間なのに、下人の僕達を差別することなく接っしてくれる。 「マルク先生!お体は大丈夫ですか!」 先生はもう70歳で、杖をもって移動をしている。 「ありがとうダージー。君は本当に優しいね」 僕の頭を、先生は優しく撫でてくれる。 「もう少しでおやつの時間。一緒に帰ろうか」 そういって先生はよろよろしながら、ゆっくり歩いていく。 僕はその先生の背中に手を当てながら、一緒に帰っていった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!