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泣きながらサツキは病気のことを話してくれた。彼女の形のいい唇から、ぼろぼろと落ちていく真実。
生まれつきの病。先例がなく今の医療技術ではどうしても治らないこと。
知らなかった。
サツキはいつだって楽しそうに笑っていた。その肌色の青白さが無ければ、病気だってことも忘れてしまいそうになるくらいに。
ずっと、苦しかった。
ほんとうに、辛かった。
ぎゅっと自分自身を両腕で抱き締めて、サツキは唇を噛み締める。
「何のために生まれてきたんだろうってずっと思ってる」
サツキの顔が歪む。まるで何かに刺されたように。ああ、その痛みを少しでも減らせたらいいのに。
「初めて会った日さ……屋上から、飛び降りようとしてたんだ」
あの日と同じ笑顔を浮かべて、そう言ったサツキは鼻をすすって俺を見た。
鳶茶色に、囚われる。
薄い唇が、ひらく。
「リキが来たから、死ねなかったんだよ」
責任とってよね、とパンチされた。その腕が折れそうなほど細くてぎゅっと唇を噛み締めた。
「何で、死ぬとか」
ありきたりなことしか言えない俺に、サツキはまっすぐ言葉を放った。
「病気で死ぬくらいなら、自分で死ぬタイミングを決めて死にたい」
それは、なんて。
なんて、美しくて、残酷な願望。
その言葉の重さをちゃんと受け止められるほど俺は大人じゃなかった。けれど、その気持ちを痛いほどに理解できるのもまた、俺が大人じゃないからだった。
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