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「は、何、言って」
冗談にしては笑えなかった。口の中がカラカラに乾燥して、ごくり、と喉だけを鳴らした。
「リキに殺されるなら病気に殺されるより全然いいよ」
何で、そんな風に笑うんだ。無理するくらいなら、笑うなよ。まだ眼のふちが赤くて、鼻声で、時々思い出したようにしゃくりあげてる癖に。
「……約束、してよ。嘘でもいいから」
サツキの声が震えているのは泣いたからか、それとも。
「嘘でもいいって……それ約束する意味あるの」
「あるよ。だって、そうしたら病気で死ななくて済むって思って生きていける」
ぎゅっとこぶしを握った。感情がぐちゃぐちゃだった。呼吸の仕方を思い出すみたいに、息を吸って、息を吐いた。
「わかった……約束、するよ……、だから勝手に死なないで」
「わぁ、本当に?」
――……ありがとう、リキ。
そう言って君は笑った。その時の笑顔が美しすぎて、また俺の心臓はドクンと大きく脈を打った。
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