17人が本棚に入れています
本棚に追加
/297ページ
賢一郎はジュンの言葉に頷きながら話す。
「そうなんだよ。あの人たちが工作員なんだ。今こうして話をしている間も、私が逃げ出しはしまいかと、この家全体を見張っているはずだよ」
ジュンは立ち上がって、リビングのガラス戸の方に駆け寄り、かかっているレースのカーテンをそっとめくった。スーツ姿の男が一人だけ玄関の前に立っているのがわかる。
最初に二階から見たのは4人だったから、残りの三人は、どこか別の場所からこの家を見張っているということなのか?
ジュンは思わずカーテンを閉め切って、テーブルの方に振り向きながら賢一郎に言う。
「おじさん、どうするの? これから……この後、あの人たちに連れて行かれちゃうの?」
「賢一郎さん、行くことはないですよ! わたし、警察に連絡します!」
芹香が立ち上がり、強い口調で言った。
だが、賢一郎は寂しそうな顔で彼女を見て、首を横に振った。
「彼らは、警察も政府関係者も、どうにかして味方に付けている可能性が非常に高いのです。それらの情報網を使って私を捜し当てたようですし……。ですから、警察に連絡などしても、私を助ける側には回らないでしょう」
「そ、そんな!」うな垂れる芹香。
その肩を抱きながら、百代が言う。
「それじゃあ、賢一郎さんは……捕まってしまうしかないんですか?」
「…………実は…………捕まらないための方法が一つだけあります」
賢一郎が芹香の泣き出しそうな顔を見ながら言う。
ハッと目を見開いて潤んだ瞳を彼に向ける芹香。
「『方法』って?」
マキが眉間にシワを寄せる。
賢一郎は言った。
「私がもう一度、姿を変えることです!」
その場にいるみんなの目が見開かれて、賢一郎に向けられる。
ジュンが口を開く。
「どういうこと?」
「もう一度、若返るということだよ、ジュンくん。マナ・キャンディを使ってね」
「でも、キャンディは確か『4粒』で――」
ジュンは昨日の賢一郎の説明を思い返してみた。
最初のコメントを投稿しよう!