ラム

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 ジュンが小学三年生のときにラムは家族の一員になった。  学校の帰り道、近所に住む幼馴染みで同級生のマキが、捨てられているのを見つけて抱き上げたのだ。 「見て、見て、ジュンちゃん、仔猫だよ。かわいいねぇ~」  みゃ~みゃ~と鳴く、真っ黒でようやくよちよちと歩けるようになった、か弱い命。 「ジュンちゃんも抱っこしてごらんよ」  マキがそっと差し出すままに受け取ると、軽くって温かくって少しふるえているのがわかった。そして、みゃ~みゃ~と鳴き続けている。 「お腹、空いているのかな?」と、ジュン。  すると、マキは何かを思い出したようにランドセルを降ろし、給食袋の中から食べ残しのパンを取り出した。 「これ、食べるかな?」 「あ、食べるかもね」   仔猫は口元にパンくずを近付けられると、ひくひくと鼻を小刻みに動かしてから、ぱくりっとかぶりついた。 「わあ~食べたぁ~、かっわい~」  マキは茶色がかった大きな瞳をキラキラさせて、目の前の食べ物に夢中の仔猫を見つめている。そして言った。 「ジュンちゃん、この子どうする?」 「ど、どうするって言われても……どうしよう? お母さん動物は嫌いだし、うちではたぶん飼えないよ……マキちゃんのうちはどう?」 「だめだめ、タクが喘息だから絶対にダメだよ」  そう言うマキの顔は、半分泣きそうになっている。タクというのはマキの弟の名前だ。  ジュンは、ふぅと短いため息をついて仔猫を元の場所、段ボール箱の中にそっと戻した。 「残念だけど……そういうわけで、ぼくたちにはおまえを連れて帰ることは出来ないんだ。……ごめんね」  それからジュンは目線をマキにやり、この場を去ろうと促した。彼女は瞳を少し潤ませながら頷いて、二人はその場を後にしたのだった。
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