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タクの異変
翌日の朝、マキがいつものように、弟のタクを連れて山城家にやってきた。
インターフォンが鳴らされ、ニッコリと芹香が顔を出す。
「マキちゃん、おはよう」そしてマキの後ろのタクにも目を向ける。「タクちゃんもおはよう」
「おはようございます!」元気に挨拶するマキ。
タクはコホッコホッと咳をしながらちょこんと頭を下げた。
「ごめんね。今朝はジュンったら寝坊して、まだ朝ご飯食べてるのよ。悪いけど、先に行っててくれない?」
「大丈夫です、お母さん。まだ時間はあるし、わたし待ってます」
実は、マキは将来ジュンと結婚すると決めている。それでいつのころからか芹香のことを“おばさん”とではなく“お母さん”と呼ぶようになっていた。
芹香は子どもの言うことだからと、特に気にしてはいない。
「今日、ぼく日直だから、一人で先に行くよ」
タクは咳をしながら、また、呼吸もゼィゼィと、少し苦しそうにそう言う。
「タクちゃん、風邪ひいたの?」
芹香が心配して尋ねるが、タクは首を横に振って見せてから、駆けて行ってしまった。
「最近、喘息の発作がひどいんです。母も今日は休むようにと言ったんですけど、『友だちと約束がある』って聴かなくて」
「そう、心配ねぇ……」
「……でも、まあ、あんなふうに走れるくらいだから、たぶん大丈夫ですよ」マキは簡単にそう説明した。
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