17人が本棚に入れています
本棚に追加
「では、朝の出欠をとる!」
皆がドワッとずっこけた。大げさに椅子から転げ落ちる者もいる。
再び、大騒ぎだ。
それを見て担任は、うんうん、と頷いて言った。
「山田さんのこと、気になるとは思うが、今の時点で先生から皆に言えることはない!」
不満の声が教室に響いたが、担任はそれを無視して出欠を取り始めた。
名前を呼ばれた者が返事をする儀式が進む中で、教室の空気はいつもの感じに戻っていった。
ただ、ジュンだけは気持ちが治まらない。
休み時間には、母子家庭等の特別な事情を持つ生徒だけが持参可のスマホを取り出し、こっそりとマキの自宅やマキの母親のスマホに電話をかけた。だが、どちらに何度コールしても留守電メッセージに切り替わるだけ。
おかげで、その日は一日中、授業に身が入らなかった。
学校から帰ると、ジュンはすぐに固定電話から山田家やマキの母親に電話をしてみた。
だが同じことだった。
何度かコールした後、留守番メッセージに切り替わる。
仕方なくジュンは、電話するのを諦めた。
リビングのソファに寝ころんで、ぼぉ……としていると、ラムが猫用の扉をくぐり外から帰ってきて、ソファに飛び乗った。
ジュンが手を伸ばし喉元をさすってやると、ゴロゴロと音を出す。
「おまえ、本当にもう大丈夫なのか?」
ジュンが言うと、ラムは「安心しろ」とでも言うように、大きなあくびと伸びをしてから丸くなり、ジュンの顔を見つめた。
「おじさんにキャンディ貰っていてホント良かったよなぁ」
その言葉に反応するように一度だけ細く鳴くと、ラムは眠る体勢に入るのだった。
最初のコメントを投稿しよう!