太陽のエキス

2/7
前へ
/297ページ
次へ
 数秒、そちらを見つめてしてしまったことが災いした。  路面の割れ目に気づけなかったのだ。  そこに前輪がおかしな角度で引っかかる。  その衝撃でジュンは反射的に、前輪だけにブレーキをかけてしまった。  後輪が勢いよく持ち上がり、自転車は暴れ馬のようにジュンを投げ飛ばす!  ジュンは強烈に背中を打ち、さらに転げようとする身体を手の平と膝で止める格好になった。  何が起こったのかを理解するのに数秒かかった。  不格好なヘッドスライディングをし終わったような姿勢。  何とか上半身だけ起き上がらせる。  そのタイミングで、通りすがりの高校生が、ジュンを立ち上がらせてくれた。  息がちゃんとできなかったので、絞り出すように短い感謝を伝える。  その人も帰路を急いでいたようで、気をつけるようにとだけ言い残して去って行った。  ジュンが息を整えながら自転車の方に一歩踏み出したところで、何かを蹴飛ばした。   本屋で購入したマンガとノートの入った包み。一部破れていた。  拾い上げながら、ジュンは倒れた自転車の、その更に20メートルほど先のベンチに目をやってみる。 ――そこに座り、うなだれている人。  その人物は全く動かない。  単に眠っているのなら良いのだが、具合でも悪くなっているのだとしたら……?  自転車を起こし、前カゴに包みを入れる。そして気づけばジュンは、足を少し引きずりながらベンチの方に向かっていた。
/297ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加