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神秘の効能
自家用車で市内の総合病院に到着したのは20時を回る頃だった。
受付時間は終了している。
ジュンと芹香は救急外来の入口から中に入り、百代から聞いていた部屋番号を真っ直ぐに目指す。
エレベーターで5階まで上がり、その番号の部屋に辿り着くと、芹香がドアをノックした。
中から「はい」と声がしてドアが開く。百代だった。
「ああ、芹香」そう言って彼女は芹香に抱きついた。
そこへ背の高い男性が近付いてくる。
「芹香さん、ありがとうございます。ジュンくんも、ありがとう」
彫りの深い顔つきのメガネをかけたこの男性は“山田健吾”。マキの父親で、中学校の国語の教師をしている。
日本人の父親と、アメリカ人の母親の間に生まれた、いわゆるハーフで、マキの茶色がかった瞳と栗色の髪の毛は、まさに父親譲りのものだ。
ジュンはベッドの方に目をやった。
人工呼吸器を取り付けられて横になっているタクと、枕元の椅子に座っているマキの姿があった。
ジュンはそばに行き、そっとマキの肩に手を置いた。と、突然、マキはクルリとジュンの方を見上げ、顔をくしゃくしゃにして抱きついた。
そして号泣――
「わたしのせいなの! わたしのせいなのよ!」
一緒に登校していたら、弟の発作が起こらなかったわけでもないのに、マキの感情は自分を責めずにはいられないようである。
泣きじゃくる彼女の肩越しに、ベッドの上のタクが見える。
空気の漏れるような機械音。
その音に合わせて胸の辺りが動いている。
ジュンも泣きそうになった。
でも、何とか目を潤ませるにとどめ、マキの上体をそっと自分から離す。そして、何度も泣いたために真っ赤になっている彼女の頬を両手で優しく挟んで、綺麗な瞳を見据えた。
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