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「そんなふうに考えないで、マキちゃん。心配しなくても大丈夫だから。今、ぼくたちに出来ることをしよう、ね?」
「で、でも、どうしたらいいの? タクは、タクは、このままだと死んじゃうのよ? こんなの、こんなことって……」
マキの台詞を聞き、芹香は事態の深刻さに驚く。思わず百代と健吾の方へ振り向く。
目が合ったとたん、百代も泣き出してしまった。健吾は百代を胸に抱いて芹香を見据えると、小さく首を左右に振った。
「マキちゃん、ちょっと一緒に来てくれないかな。話があるんだ」
ジュンはそう言うと、マキの手を引いて部屋を出ていった。マキは少し驚いている様子だ。
静まり返った病院の廊下を少し歩き、人気のない待合室のベンチに座るよう促すと、ジュンは静かに話し始めた。
「『昨日凄いものを見たから、マキちゃんに話す』って、今朝ぼくが言ったこと覚えてる?」
マキは涙を拭きながらコクリと頷く。
「それはね――」
ジュンは、昨日の夕方に公園で不思議なおじさんに会ったこと、その人からもらったキャンディを食べると、ジュンの怪我が治ったこと、大怪我をして帰ってきたラムにそれを食べさせると、目の前で傷口がみるみるうちに塞がって回復したことを、ゆっくりと、出来るだけ詳しく話した。
そして、ウエストポーチから小ビンを取り出して言った。
「これが、そのキャンディだよ」
説明を終えたジュンの顔は真剣そのものだったが、マキは彼の言ったことを信じて良いのか、作り話だと判断すべきなのか、しばらく考えて複雑な表情を見せていた。
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