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「誰だろう? あの人たち……」
「さあ?……」
「下に行こう!」
ジュンが部屋から出て階段を駆け下りる。マキもそれに続いた。
玄関を見ると、ちょうど芹香がドアを開けるところだった。
「どうぞ、お待ちしていました」
芹香が笑顔で言うと、チューリップハットを脱いだ賢一郎が入ってきた。ジュンたちを見て、優しい笑顔を見せる。
「こんにちは、おじさん。待ってたよ」
「ホントはさっきまで寝てたんですけどね」
「マキちゃん、余計なことはいいんだよ」
「だって本当のことじゃない」
ジュンとマキのそんなやり取りを見て、賢一郎は微笑んだまま静かに頷くと、靴を脱いで家の中に上がり込んだ。
「おじゃまします。……ジュンくん、皆さんに声をかけてくれて、本当にありがとう」
「いやぁ、そんなに大変じゃなかったし、へへへ」
賢一郎の改まった感謝の言葉に少し照れながら、ジュンは頭をかいた。
芹香に促されて賢一郎はリビングに通された。
ジュンとマキもそれに続く。
健吾、百代、タクが立って彼を迎えた。
「勝手なことを言って、皆さんに集まっていただいたこと、心から感謝いたします」賢一郎は深々と頭を下げた。「まず始めに、皆さんに謝らなければなりません。もうすでにジュンくんから聞いておられると思いますが……私の本当の名前は“山城賢一郎”と申します。名前を偽ってしまったこと、是非ともお許しいただきたい。本当に申し訳ありませんでした」
健吾が言う。
「賢一郎さん、誰もそのことは気にしていませんよ。本当のことをつい言いそびれてしまうことは、誰にでもありますから」
百代が続ける。
「そうですよ。ですから、気になさらないでください。ねえ、芹香?」
「え、ええ……」突然、振られて、多少ドギマギしてしまう芹香。「と、とにかく、皆さん、どうぞ、お掛けください」
「そうだよ、おじさんも、はい、座って座って」
ジュンはそう言って、テーブルの方へと賢一郎の手を引いた。
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