賢一郎を迎えて

4/9
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/297ページ
 皆がテーブルを囲み、席に着いた。  まずは健吾が口を開く。 「それにしても、賢一郎さん、驚きましたよ。あなたが、ジュンくんの曾爺さんだった、だなんて」 「申し訳ない……『いつかは話さねば』と、思っているうちに、ズルズルと来てしまいました」 「マナ・キャンディの力で若返ったんですね?」 「そうです」  健吾に尋ねられ、賢一郎は先日ジュンにしたのと同じ話、つまり、自分が若返ることになった経緯をみんなにも話し出した。  孫の智志と芹香の結婚式に出席した後、政府からの依頼で内戦の最中の〈ミディアン王国〉へ行ったこと――  そこの国王が軍務に用いる為にMannaを強制的に作らせようとしたこと――  国王の娘の援助により、アメリカからの救援ヘリコプターに乗り込み、逃げることが出来たこと――  着いたアメリカ側からも、Manna(マナ) の製法を教えるよう圧力がかかりそうになったこと――  そして、そこから脱出する為には姿を変えるしかなかったこと――  ――それらを時間をかけて、ゆっくりと話していった。 「そして、アメリカで出会った役人が、Mannaで一儲けしようと、工作員を雇って私を追っているのです」  賢一郎はそこまで話すと、ぬるくなったコーヒーを啜った。  健吾が尋ねる。 「その工作員が、健一郎さんの居所を突き止めた、というわけなのですね?」  賢一郎はゆっくりと頷く。 「そうなのです。実は、既にその工作員たちに私は捕まってしまいましてね。……彼らは今日の午後の便で私をアメリカに連れて行く手はずを、もう整えているのです」 「あっ! じゃあ、おじさんと一緒にここまで来た人たちは――」 「おや? ジュンくん、見たのかい?」 「う、うん、二階の窓からね。……マキちゃんと『誰だろうね』って話してたんだ」
/297ページ

最初のコメントを投稿しよう!