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半ズボンからすらっと出ているジュンの脚は、太ももから膝にかけて、派手に擦りむき血が滲んでいた。手の平からも出血している。
「大怪我じゃないか、いったいどうしたんだね? 少年」
ジュンは少し照れながら、先ほどの自転車での転倒について手短に説明。すると、その人は、「ちょっと待っていなさいよ」と言いながら、トランクケースの側面の一部を引き出した。
ざららっと音をさせて現れたのは、銀白の粒たち。
「うわぁ真珠だ!」その美しさに思わず声を漏らすジュン。
男はそれを一つ摘まんで差し出した。目を丸めるジュンに向かってその人は言う。
「食べてごらん、さあっ」
強要するような所作に逆らえず、その一粒をジュンは手の平で受け取る。
「こ、これ、って、真珠……だよね?」
「いいや」首を横に振る。「Mannaだよ。ほら、食べてごらん、こうやって――」
その人は引き出しの中の一粒を摘まんで自分の口に放り込んだ。それから空を仰いで目を瞑り味わっているように見せる。
口の中では、何やらパチパチと弾ける音。
いつだったか、母親が駄菓子屋で面白がって買ってきた弾けるキャンディみたいなものなのだろうか? いずれにしても毒ではないようだ。
ジュンは穏やかな男性の瞳と自身の好奇心に逆らえず、それを口に放り込んだ。
途端に、それは粉々に砕け、口中を跳ね回る!
その刺激は目や鼻の奥に広がり、頭のてっぺんにまで突き抜けていく。
一瞬、髪の毛が逆立ったような感覚にさえなった。
そして、スッと消えてなくなったのだ。
残ったのは、ふわんとした、とても優しい甘さだけだった。
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