太陽のエキス

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 男は左右の眉を少し上げ、目を見開いてジュンを見ている。美味しいだろう? と目で言っているのがわかる。 「……あぁ、なんだか不思議な感じ。こんなの初めて食べた。……マナって何なの?」 「うん……特別に教えてあげよう。これを使ってね――」男性はトランクケースをぽぽんと叩いて続ける。「太陽のエキスを集めるんだよ」 「『太陽のエキス』?」 「そう、ここから――」ケースの取っ手の横をスライドさせると、レンズのようなものが現れた。「――光を集める。すると、密度が濃くなった光は、このケースの中で液体になるんだ」  ジュンは首を傾げる。日光が液体になるなんて初めて聞いた。そんなことが本当にあるのだろうか?  男はその顔を見て、はっはっはっと楽しそうに笑った。そして言う。 「普通はそんなことは起こらないよ。でも、このケースの中ではそうなるのさ。そして、集まった液体を一気に冷やすんだ。すると――」両目を丸くしてジュンを見る。ジュンもつられて目を見開いた。「――真珠のような結晶になるというわけ」 「へぇ……栄養があるってこと?」  質問に深く頷きながら、男はジュンの脚を指差した。自然にそちらに目が向く。
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