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しばらくぼんやりと小ビンを見つめていると、下から芹香の悲鳴のような声が聞こえてきた。
何があったのかとジュンは階段を駆け下りる。と、黒猫がひょこひょこと不自然な仕方で廊下を歩いていた。
飼い猫のラムだ。左の後ろ足から血をポタポタと流している!
「ラム、どうした!」ジュンは駆け寄り思わず抱きかかえる。
ギャン!!! と、ラムが激痛のあまり声を上げた。どうやら怪我をしているのは後ろ足だけではないようだ。
「と、とにかく手当てをしなきゃ!」そう言って芹香は救急箱を持ってきた。
消毒液を脱脂綿にひたしてから、とりあえず傷口に当ててみる。
ラムは痛みを我慢しているのか、ブブ……グブブブブ……と、これまで聞いたことない声を発している。
猫の表情は読み取りにくいと言われることもあるが、苦痛で顔を歪めているのは明らかだ。
「痛いね……痛いよね……我慢してねぇ」芹香も自分が痛いかのように顔を歪めながら血を拭き取り、箱から包帯を取り出そうとしたが見当たらない。「ああ、もう、こんなときに!」
「何があったんだろう? ケンカかな? もしかして、車に轢かれちゃった?」
「わからないけど、こんなの初めてよぉ。動物病院はまだやってるかしら」
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