手紙

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 一瞬、空が見えた後私の記憶はない。気づけば病院のベッドの上だった。大腿骨骨折に、車いす生活。リハビリに励むが、一向に良くならないこの足。周りの人間に支えられているものだと思っていた。  社員も駆けつけてくれていた。 日替わりで、各部の部長連中がお見舞いに来てくれていた。 「社長、お加減は」毎日心配のお見舞いだと思っていた。  部長連中の中に混じって、一人の女性。それが最初の出会いだった。  社員の名前ぐらいは覚えているはずだったが、彼女の名前は知らなかっ た。  顔も名前も、しかし彼女は毎日、お見舞いに来てくれる。次第に部長や社員は来る事は無くなったが、彼女だけが毎日の様に通っ てくれていた。
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