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2・過去
時は遡り今から10年前のこと。
私は高校に通いながら放課後はアルバイトをするどこにでも居る高校生だった。アルバイトをする理由は一つ、大好きな歌を続けるためにお金が必要だったから。
アルバイト先である楽器店は私にとって最高の立地だ。3階建ての雑居ビルの中に、1階には楽器店、2階にはボイストレーニングを行う教室が入っている。
アルバイトは22時まで。終わると私は2階に移動じ天使のような美声を持づと評判の杏子先生のレッスンを受け帰宅する。
家に着くと夜中0時すぎることも多かったが、大好きな歌を続けられるためだったら苦痛など感じず、むしろこの生活が気に入っていた。
アルバイトは週5回入っているため友達と遊ぶ時間はなく女子高生らしい生活は送れていないことは何となくわかっていた。それでも歌うことをやめるという選択肢はなく、これが私の人生をかけることなのだと信じて疑うことなく続けている。
ある日、楽器店でのバイト中に3人組の男子が訪れた。年齢は少し年上のように感じる彼らは大学生のサークル活動か何かなのだと思うが、楽しそうにする男子達が少し羨ましく目に映りこんでくる。
店主と楽しそうに話し込みながらギターやベース、ドラムを試し弾きし「これいいんじゃね?」「これはちょっと重めだな。」など言いながら物色しているようだ。
珍しい光景ではない。この店に訪れる人の大半は店主の知り合いだ。店主は温顔で朗らかな人柄で誰にでも好かれるような雰囲気を持ち合わせている人。
音楽に詳しいし、お客さんが知りたい情報を持ち合わせている店主は話をしていて楽しいのだろう。
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