44人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
――いつからだったろうか。
小学校に上がる頃には、既にスカートを履くことに抵抗があって。
地元の高校で女友達と話していても、何となく合わないことに気づいていた。
家ではもっぱらジーンズにトレーナー、日曜日なんかスエット上下。
色気のいの字すらない自分に、姉はいつも顔をしかめていた。
髪の毛はショートカットで、下手したらクラスの男子たちよりも短くしてたかもしれない。
「私」というのに違和感を感じて、自分のことをずっと「自分」って呼んでいた。
更衣室で着替えるのが恥ずかしくて、皆を見ないように背中を向けて入り口近くで着替えた。
親友だったはずの女の子の手に触れたいと思ったのは、高2の時。
一緒にいるとドキドキして、恋だと気付いた時に自分は変だと思った。
だって、女が女を好きになるなんて?
おかしい、なんか、おかしい。
おかしいって気づかれちゃいけない、だから。
友達に勧められるまま、自分のことを好きだという男の子と付き合った。
キスされて、思いきり突き飛ばした。
気持ち悪かったんだ……。
泣いて、泣いて、気が付いた。
自分が好きなのは女の子だってことに。
自分はずっと男の子になりたかったってことに。
生まれ落ちた性にずっと違和感を感じて生きてきたことに。
東京の大学で出来た友達に、はじめてカミングアウトをした。
「そうなんだ」
さして驚かれることもなく、自分という人間はただの葵という友人として仲間に受け入れられた。
最初のコメントを投稿しよう!