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「今年、どうなの? 雪」
「温暖化の影響だろうねえ、まだそんなに積もってないわ。クリスマスまでに一回溶けてしまうかも」
「ええ?! したらソリもできないでしょ」
「ああ、この時期になったら学校帰ってすぐあんたもお姉ちゃんもソリ乗りに行ってたもんね」
そうそう、とあの頃を懐かしく思い出しながら母と自分のために、お茶を注ぐ。
「お姉ちゃん、元気?」
「元気だよ、6月に3人目生まれるって。あんたも会いにおいで」
「……、いいの?」
「いいに決まってるっしょ」
「お姉ちゃん、事情知ってる? 怒ってないの?」
「知ってるよ、怒ってない。お姉ちゃんは、ずっとそうだろうなって思ってたってさ」
そう言った瞬間、ようやく母から笑顔が零れた。
ただし、どこか疲れたような諦めたような笑顔だ。
そうさせているのが自分だということに申し訳なくて。
「母さんは、」
まだ怒ってる?
聞きたかったことを声に出し切る前に、無情にもお風呂が沸いたというメロディが響く。
母はその音を合図にパジャマと下着を用意しはじめたので、話は終了。
「したら風呂よばれるね」
「うん、寒かったらお湯足してね」
脱衣場のない我が家なので、風呂場に向かう母に背を向けた。
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