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「あ! コレ可愛いー!」
「ん?」
墓参りを終え、月冴の買い物に付き合ったあと、ふたりで駅ビルに併設されたオープンモール・螺鈿通りを訪れた。
日曜日というだけあって人の賑わいはかなりのものだ。
流行りのドリンクやオープンサンドの店に、オーガニックをウリにした輸入雑貨店やコスメショップなど、立ち並ぶ店のどれもに人の出入りがある。
ゆっくり座ってコーヒーの一杯でもと考えていたが、空席のある店を探すのも難儀するかと思われた時、月冴が声をあげたのだ。
彼が立ち止まったのは、天然石を扱うアクセサリーショップの前で、通りに面したショーウィンドウの中に飾られていた小さなピアスに目を止めたようだった。
「……足跡?」
「猫の肉球かなぁ!? 可愛い~。ね、中で見てもいい?」
「いいよ。珍しいな、月冴がそんなにはしゃぐなんて」
弾むような足取りで、月冴が店の中へ入っていく。
そのあとに続くと、さきほど通りから見たショーウィンドウの中を覗き込んだ。
「実物のが数倍キレイ! 中の石がキラキラしてる~!」
「……綺麗だな」
開けられた化粧箱の中に敷かれたコットンの上で、眩い輝きを放つ、小さな肉球。
それを見つめる月冴が、そっと自分の耳を指先でつついた。
「俺もピアスホール開いてればなぁ」
「そっか、お前は開いてないもんな」
ついでとばかりに真似をして月冴の耳をつついてやると「くすぐったいよ」──そんな風に言われて避けられた。
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