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「さすがに、デート先が都心の墓地じゃ嫌か? まぁたしかに、色気もなにもあったもんじゃないけど」
これではデートではなく心霊スポット巡りだ──そう言われてもおかしくはない。
が──。
「そんなことない! 尚斗と行くところに嫌な場所なんて……本当に俺が一緒に行っていいの?」
そんな風に言うもんだから。
「良くなきゃ言わねぇよ。……いつかは連れてくつもりだったし。その予定が早まっただけ」
表情をほころばせ、月冴の頬に触れる。
いつかは亡き母に月冴のことを紹介するつもりでいた。
もちろん、本当に逢わせることなど叶わないが、形だけでも『彼が俺の最愛の人だ』と──伝えるつもりだった。
──我ながら、愛が重い。
「……引いた?」
上目遣いに尋ねれば、
「引いてないよ! そんな風に考えてもらえてたなんて思ってなかったから……ちょっと感動してるだけ」
くわっと顔を上げて詰め寄ってきた月冴に即答された。
感動してたのか……黙っているからドン引きしているのかと思った。
予想が外れて一安心だ。
「終わったら月冴の買い物にも付き合うよ」
そう言って手を差し出す。
今日は日曜日だし、完全にプライベートな時間だ。別に誰に見られて困るものでもない。
その想いが通じたのか、月冴が躊躇いなく俺の手に自分の手を重ねてくる。
しっかりと指を絡め繋いでから、ふたり並んで駅までの道程を歩き出した。
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