君の手をとって笑いあって、そしてふたりで言葉を繋いで

5/14
前へ
/14ページ
次へ
「さすがに、デート先が都心の墓地じゃ嫌か? まぁたしかに、色気もなにもあったもんじゃないけど」  これではデートではなく心霊スポット巡りだ──そう言われてもおかしくはない。    が──。 「そんなことない! 尚斗と行くところに嫌な場所なんて……本当に俺が一緒に行っていいの?」  そんな風に言うもんだから。 「良くなきゃ言わねぇよ。……いつかは連れてくつもりだったし。その予定が早まっただけ」  表情をほころばせ、月冴の頬に触れる。  いつかは亡き母に月冴のことを紹介するつもりでいた。  もちろん、本当に逢わせることなど叶わないが、形だけでも『彼が俺の最愛の人だ』と──伝えるつもりだった。  ──我ながら、愛が重い。 「……引いた?」  上目遣いに尋ねれば、 「引いてないよ! そんな風に考えてもらえてたなんて思ってなかったから……ちょっと感動してるだけ」  くわっと顔を上げて詰め寄ってきた月冴に即答された。  感動してたのか……黙っているからドン引きしているのかと思った。  予想が外れて一安心だ。 「終わったら月冴の買い物にも付き合うよ」  そう言って手を差し出す。  今日は日曜日だし、完全にプライベートな時間だ。別に誰に見られて困るものでもない。  その想いが通じたのか、月冴が躊躇いなく俺の手に自分の手を重ねてくる。  しっかりと指を絡め繋いでから、ふたり並んで駅までの道程(みちのり)を歩き出した。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加