君の手をとって笑いあって、そしてふたりで言葉を繋いで

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 電車に乗り都心部まで出ると、早い時間帯にも関わらず行き交う人の多さに少しだけ目眩がした。  実のところ、人が多い場所も喧騒も得意ではない。  改札を出てすぐ人気(ひとけ)の少ない壁際に寄ると息を整える。 「大丈夫?」 「あぁ。久々に出てきたからな。やっぱ日曜なだけあるわ」  月冴の手を取り目的地へ向かう。  駅前を離れ、大通りを抜けると、人の流れも行き交う人自体も少なくなりはじめ、さらに狭い小路に入ると、日が出ているにも関わらず、陰鬱とした雰囲気が漂う。  自分がついているとはいえ、やはりもう少し道を選ぶべきだったか──少し気が急いたその瞬間、月冴が遠慮がちに俺の手を引いた。 「今日、俺になにか手伝えることはある?」  その言葉に含まれているのは、彼なりの配慮の気持ち。  俺がどういう想いでいたのかを知ったあとなのだし、こういう伺い方になるのは、それはひとえに彼が思慮深い人間であるが故だ。 「墓石の掃除をしたいから、買ったものを持っててくれると助かるな。特に花は散らしたくねぇし、床にも置きたくねぇからさ」  そう言うと、やや緊張していた月冴の面持ちが、スッとほどけて和らいだ。 「うん、任せて」 「頼むな」  互いに頷き合う。  やがて拓けた場所に出ると、目の前に現れたのは灰色の大鳥居だった。  そこから一直線に伸びる石段──ここを登れば本堂に行かれるようになっているのだ。石段に沿うように植栽されている松の木はまだ青々としていて、訪れる者の目を楽しませる。
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