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8月13日
その日は忘れもしない。
8月13日だった。
引っ越し先の一軒家は、築50年の年代物だったけど、国道も高速道路も近い上に駅も近い上に格安。最高の物件だと父は飛びついた。
私・小野日向は、憧れの高校に入学したて。わずか4カ月ちょいの一年生の一学期に転校を余儀なくされる事態を招いた。だけど、今度の高校にも大好きな吹奏楽部がある。父譲りの能天気な性格もあって、そこまで気落ちしていなかった。
その家の庭に、ポツンと直径1メートル程度の筒状のコンクリートが埋めてあった。
「あった」というか「隠れて」いた。
大体、都会育ちの父も私も、それを見たことがなかったのだから仕方ない。
2年買い手が付かなかった優良物件は、値段を下げて父という買い手がようやく見つかった。だけど、時は夏。草ぼうぼうの庭は廃屋同然だと、父と二人で一念発起。草を刈ることにした。慣れない作業だから大変だったけど、二人で頑張れば、なんとか庭らしくなってきた。
草を刈ってみて、その時はじめて庭に端にその筒があることに気付いた。筒の上には木の板が置いてあった。まるで筒に蓋をしているみたい。その上には重石のように30㎝くらいの大きな石が置いてあった。
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