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「まあ、そういうことだから、日向はそろそろ向こうの世界にお帰り」
「は?」
そんな簡単に戻っていいの?
「だって、お前は死んでないもの。そうだね、後80年もしたら、ここにおいで」
「私、100歳まで生きるんですか?」
それって、すごくない?
大喜びで、聞き返した。
「ぬか喜びさせて悪いけど、令和の時代に合わせた言い方しただけだよ。私にはお前の寿命も見えているけど、本当のことを教える訳にはいかないからね」
そんなことまで分かるんだ。
「え? ちょっと待って。ということは、私、地獄行決定なんですか?」
「そうだね……。もしくは……。あるいは……」
急に篁さんが歯切れ悪い言い方をした。
地獄行に、私は身に覚えだらけだ。
「日向は何か悪いことをしているのかい」
「はい。こう見えて、ぼーっとしているのでよく忘れ物をします」
「そう。見たまんまだよ」
「後、返済期限過ぎているのにまだ図書館の本を返していません」
「それは……よくないね」
「時間にもルーズで、友達を待たせることもあります」
あ。篁さん、今(私の子孫、残念)って顔になった。
「今からでもいいから、その生活を改めなさい。塵も積もれば罪となる」
なんか諺風にまとめられた。
「……それに冥府に通ずる井戸を開けてしまったからね」
それで篁さん、さっきから浮かない顔なのか。
「それって……知らなかったのにヤっちゃったのは罪になるんですか?」
私は篁さんにすがった。
「おそらく……大罪だよ。自分の住まわぬ世に干渉することは」
申し訳なさそうに、篁さんが答えた。
ああ、篁さんを責めたわけじゃないのに。
申し訳ない気持ちと、将来地獄行に
「そんな……」
私は、俯いた。
そんな私を見かねて、篁さんが
「私の方で閻魔様には話をしておくよ。落ち込まないでおくれ。子孫の為に、頑張るから」
と言ってくれた。
「お願いします……」
しょぼくれた返事をひとつして、ようやく私は地獄から帰ってくることができた。
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