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「そこで閻魔様からのお言葉だ。
『逃げ出した地獄の亡者、すべて捕えよ』
これで今回の日向の『うっかり井戸を開けちゃいました』をチャラにしようというお計らいだ」
「ひぃ?! 私?」
自分でも情けない声だと思った。
ホラーな夢が、一瞬でアクションでバトルものに変化した。
「いや、無理ですよ。だって、私は普通の女子高生です。この右目で地獄の亡者を見つけたって、捕まえるなんてできっこないですもん」
特に運動神経がいいとか頭がいいとかもない。
吹奏楽やっているから、リズム感だけはいいと思うけど、それが地獄の亡者とのバトルに役立つとも思えない。
「じゃあ、地獄行だよ? それは嫌だろ?」
ぶんっと音が鳴りそうなほど、首を縦に思いっきり振った。
「だったら、がんばって捕まえておいで」
「いや、無理無理無理無理」
「やれば、できる」
そんなシュウゾウみたいに熱く言われても。
「いや、無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理……」
「困ったね」
こんなヘタレで時間にルーズでポンコツな子孫の為に、しばらく篁さんは考えてくれた。
「仕方ないね。それでは特別に、冥府の部下・牛頭と馬頭を派遣するとしよう。彼らの力を借りて、亡者を捕まえておいで。どうだい? それなら頑張れる?」
それなら……!
私はここまで頑張ってくれるご先祖様に顔を上げ、涙目で思いっきり頷いた。
こうして、うっかり冥府への井戸を開けてしまった私は、そこで待っていたご先祖様に勧められるままに「冥府の番人」をすることになってしまった。
地獄の亡者・23人。
頑張って早く捕まえようっと。
終わり。
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