6人が本棚に入れています
本棚に追加
私が視線を戻すのを、神主さんはゆったりと構えて待っていてくれた。
「お前、人に名を問う時には、自分からって親から習わなかったかい?」
言っていることは厳しいけど、神主さんはさして怒っている風でもない。
(ごもっとも)
それで
「私は小野日向です」
と自己紹介をした。
「おや、小野……?」
「はい。小野日向です」
「そう。素直なところは感心するね。
では、お教えしよう。私は冥府の番人・小野篁」
「あら! 偶然ですね、同じ苗字なんて」
こんな所で同じ苗字の人に会えるなんて、奇遇!
言う事は厳しいけど、なんだか優しそうだし。
他人とはとても思えない。ラッキー!
「偶然? 偶然なんかじゃない。『たまたま』なんて、アリエナイ。すべては意味がある。無駄なものなど一つもない。すべてが必然だから、そこにあるんだ。全部、必然の織り成す業」
篁さんは、なんだか難しいことを言った。
「そうかな? そう言われたらそうかも……ですね。だって、全国55位のありがちな苗字でしたから」
篁さんの言っている意味は分からないけど、私は別の意味で同調した。
最初のコメントを投稿しよう!