8月13日

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 私が視線を戻すのを、神主さんはゆったりと構えて待っていてくれた。 「お前、人に名を問う時には、自分からって親から習わなかったかい?」  言っていることは厳しいけど、神主さんはさして怒っている風でもない。 (ごもっとも)  それで 「私は小野日向です」  と自己紹介をした。 「おや、小野……?」 「はい。小野日向です」 「そう。素直なところは感心するね。  では、お教えしよう。私は冥府の番人・小野篁」 「あら! 偶然ですね、同じ苗字なんて」  こんな所で同じ苗字の人に会えるなんて、奇遇!  言う事は厳しいけど、なんだか優しそうだし。  他人とはとても思えない。ラッキー! 「偶然? 偶然なんかじゃない。『たまたま』なんて、アリエナイ。すべては意味がある。無駄なものなど一つもない。すべてが必然だから、そこにあるんだ。全部、必然の織り成す(わざ)」  篁さんは、なんだか難しいことを言った。 「そうかな? そう言われたらそうかも……ですね。だって、全国55位のありがちな苗字でしたから」  篁さんの言っている意味は分からないけど、私は別の意味で同調した。
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