クリスマス・キャロルが鳴り始める頃には

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9月に彼女を振って、その勢いで実家の近所に部屋借りて一人暮らしをはじめた。家賃その他もろもろ、何かと物入りとなった事で、バイトに励んだ。 ハロウィンの一ヶ月前からかぼちゃの着ぐるみ装着して、お子様に殴る蹴る罵声を浴びせられる仕事に就いた。終わればクリスマス用のスポンジケーキ焼きまくった。今から作り置いて冷蔵庫に貯め込むのだ。シーズンに入った頃、スポンジケーキは、パサパサで、とても食う気が起きん。買う気にならん。あれを有り難がる皆々様が神様に見えてくる。 仕事に昼夜がなくなった。あれば、仕事をこなす。立ち向かう力が俺にはあった。 とどめは、お正月用のお歳暮・おせち・ぶり・さけ・日本酒の仕分けだった。冷凍された蒲鉾は、冷たくて重くて泣いた。20名以上いた仲間は、3名に減っていた。皆無口になった。年末進行を絵に描いた様だった。 来年迄一ヶ月切った頃、腰が逝った。風邪もひいた。ストレスをジンで憂さ晴らししていたら、胃潰瘍になってた。仕事を辞めた。退院から、電話もでず、PCも起動させない。部屋の呼び鈴にも出ようとしない日々。社会を遮断し、寝るだけが安らかな楽しみとなった。俺は、勝ったのか? 深夜に玄関でごそごそ音がする。そのうち呼び鈴も使わずにゴンゴンとノックが繰り返された。やむなく汗じみたジャージ着て玄関に出てみると、 「あんたっ!死んだのかと思ったのよぉ~!おおおぅぅぅ・・・」 泣き出した母親がそこにいた。 「電話ぐらい出ろ!心配するだろうっ!」 これまた、涙をにじませた親父の姿がそこにあった。 ・・・本日、12月24日。息子さん、対応に出ちゃったけれで、クリスマス・キャロルは鳴り始めたばかり。ちったぁ気ィ利かせろよっ、ご両親っ!
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