662人が本棚に入れています
本棚に追加
「たぶん……、出航した時期がこの空母とおなじくらいだったらしいです。父も、乃々夏さんの艦がずっとそばについて共に航行していたはず――と言っていました」
急いで新聞をさらにめくって関連記事を探した。
「テレビの情報番組もその映像ばっかり流されているんですよ。いまつけますね」
千草がすぐに店のテレビを付けてくれる。
アナウンサーの淡々とした状況報告の音声と、事の大きさを捲し立てるようなリポーターの音声が入り交じる。
《 テロ船団と見られております! 死傷者はいまのところ確認はされておりません。同時に領空も侵犯されていたとの確認が取れています! 》
《 対国は当国とは関係のない船団と表明 》
《 不審船の領海侵犯は数日前にもあったとのことで、その時は巡視船と接触もあったとのこと 》
《 予兆があり、海軍艦隊も巡回中だったようです 》
《 テロ船団数隻、すべてが爆破炎上にて沈没 原因は不明――。日本国側の海軍艦隊、コーストガード巡視船からの迎撃のための砲撃は実施しなかったとのこと 》
どこのチャンネルに変えても、新聞の一面に大きく掲載されている巡視船が白煙をあげている映像ばかりが流れ、予測だけを並べ立てるコメンテーターたちの議論だけが繰り返されていた。
朝の十時を回ろうとしている。
開店前の準備をしていた緑だったが、つけていたエプロンを解いてカウンターへと投げつける。
「岩国に行ってくる」
「え!? ちょっと、マスター。ダメですって。いま基地も混乱を極めているか、対応でいっぱいいっぱいですって。しかも乃々夏さんはいま、あの海にいて基地にはいないんですよ」
最初のコメントを投稿しよう!