(済)(イ)第四話「靴の石ころ」

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(済)(イ)第四話「靴の石ころ」

   靴の中に石ころが入っていた。  一歩、歩いて地面を踏むと、足の右側で、ぎゅっ。  また少し歩いていると、今度は前のほうで、ぎゅっ。  てくてくてくてく歩くたびに、石ころはあちこち移動する。  あはは、まるでランダム足つぼマッサージだ。  次はどこに転がるかなあ。  いつものバス停に着いたけど、今朝はもう少し歩きましょ。 <その夜>  ばたばた仕事を終えて、帰り道。  石ころがなくなってるのに気がついた。  ちょっと寂しくなった。  下を向いて歩いた。  石ころをゆっくり見たのは、はじめてだ。  小さいのやら、とがったのやら……  みんないろんな表情してる。  あいつは、どんな石ころだったんだろう。  この大きいのが、あいつのお父さん石ころかな?  じゃ、こいつが、あいつのお兄さん石ころだ。 fcedab25-6981-4098-a518-af18682f5a41  ……ところで帰ってきたかい?君たちのところへあいつ。  返事はなかった。  僕は暗くなりかけた道を急いだ。  じゃりじゃり音をたてながら。
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