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(イ)第八話「手アイロン」
我が家の七不思議の中に「洗濯物の出来」と言うのがあった。
(解決したので過去形)
息子も娘も、もちろん僕も洗濯をするが、どうやらかみさんの洗濯物だけ格段に出来がいいのだ。
性格の問題もあるだろうが、いつもかみさんのだけぴしっと揃い、かつ締まっている。しかしその割にほわっとしている、なんとも矛盾を含んだ出来栄えなのだ。
洗濯機、洗剤あたりはもちろん我が家共通なので、残すところは「畳み方」。
謎を解くため何度かかみさんの畳んだ洗濯物を分解?し、再度組み立てた事がある。
不器用な僕でも何度かやり直しをすれば、上下左右ほぼ均等に畳め、ぴしっ感も真似られるのだが、どうも次の段階の「締まり」と「ほわっ」の相対するフィニッシュには程遠い。
こっそり作業現場?をのぞき見した事もある。
もちろんスピードは僕と比べ桁外れに早いが、それ以外はほぼ変わらない。
それどころか「ヘイ、一丁上がり」と言う感じで、畳んだ洗濯物をぽんぽんと叩き、ぽいと山積みする。それだけだ。
謎が解けたのはごくごく最近。
洗濯機の調子が悪くなって買い替えのため、何気に「洗濯」のワードで検索をしていると、ふと目にとまったのが「手アイロン」と言う言葉。
響きが気になってネットの解説を読み進めると
「手アイロンとは洗濯機から取り出した洗濯物を手でパンパン叩いて伸ばす事」とか「アイロンのない昔は手をアイロン代わりにしていました」等々。
どうやらこの手アイロンと言う言葉、死語の様で、解説はかなりいい加減っぽい。
(余談ですが、このところいい加減な説明がネット上で溢れかえっていてどれを信じていいか最近本当に困ります)
信憑性に欠ける解説を斜め読みしてやり過ごすと、ありました。
「むかし、お婆ちゃんはいつも手拭い(ハンカチの様な布)を持っていて座っている時、それを両手の平でこすっていました。何度かその手拭いを触った事があるのですがいつもぴんと張って妙にあたたかかったのを覚えています。
洗濯物も同じで乾いた洗濯物を膝の上に乗せては両手でギュッとひとこすりするのです。
『これは手アイロンと言ってぎゅっとするだけで洗濯物に心が入るんだよ』と言われたのを今でも覚えていて。だから今もギュッ。やってます。(笑)」
ペンネーム 〇〇 〇子
……そう言えば、うちのかみさんも、お婆ちゃんっ子でした。
<おまけ>
実はこの謎が解けた事、かみさんに言っていません。だって、これ言ってしまって明日からの洗濯物の出来、変わってしまっては困るじゃないですか、良くも悪くも……(笑)。
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