血の贖い

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暗闇のような森の中に 瞬く星がある 巨龍が天から降りて来て その星を喰らおうとする少年は剣もて 木に登り 巨龍に挑みかかる あの星は あの星は おかあさんの病気を治してくれる星 あの星を砕いて粉薬にすれば 母親は治ると昨夜夢に見た啓示 だから 絶対渡すわけにはいかない! 少年は剣を振って巨龍の眼に突き立てた 巨龍は叫び声をあげ少年に挑みかかった 少年は巨龍の爪に搔かれ木からもんどりうって落ちた ちくしょう! 少年は胸から流れる血にふるえながら立ち上がろうとした しかしもう あの星は 巨龍に喰われ 消えていた 少年はうちひしがれて家路を辿った 扉を開けると そこには小さな幻影のような龍が居て 半分透きとおった母親がその背に座っていた 母親は少年に向かって微笑みを投げかけると その小さな龍と共に 天井をすうっとすり抜け天空へと旅立って行った 少年は外に出て夜空を見上げた するとあの巨龍が小さな龍を迎えに来てい ぐんぐん星空に向かって3つの影は消えていった 少年は家に入り 母親の褥を訪ねた母親の姿はなかった 少年が掛け布団を捲ると きらきらとした星屑が金剛石よりも明るく輝き 少年を驚かせた すると昨夜の夢は何だったのだろう と 少年は考えた 巨龍は敵なのか味方なのか 母親は寿命だったのか? 寿命とは本当にあるのだろうか? 寿命とはなんなのだろう 母親は助からぬ運命だったのか? ガタピシと玄関の扉を少年が開けると金色に輝く星の粒子が爽やかな風となって少年の身体を包んだ 血が止まった すると母親を連れて 巨龍が星屑模様に光りながら 天空から降りてきて そっと少年の母親を地上に降ろした 巨龍は微笑んだ 巨龍は天へと帰っていった 地上には少年と星屑の地面に横になった少年の母親のみが遺された 少年は母親を抱きかかえ玄関から家の中へ入っていった そうして畳の上に静かに母親を横たえた それから台所に行き湯呑みに水を注ぎ また敷布団に散らばった星屑を金槌で更に細かく砕き 湯呑みに散らした 少年は母親の唇に触れ そっと口の中へ星の水を流し入れた 母親は目を見開き 少年を見て笑い 名を呼んだ 不思議な事が起こったんだよ母さん 少年は開け放たれた玄関の先を眺めながら言った 少年は母親が回復したことよりも今夜起こった出来事が 人間知を超えた 途方もない 天の神一族の冗談のように感じられてならなかった 星は何事もなかったかのように 少年とその母親の棲む家屋を包み込むように 静かに瞬き続けた 少年は確かに夜空の奥に神々の哄笑を聞いた と感じ つられて おもわず少年もそうせずにはいられなかった 少年は、笑った、、、、、、🌸🌸🌸、、、、、、花が綻ぶようにとても綺麗に。もう少しだけ、母の命を、お願いいたします、、、、、神様、、、、、少年は、祈った。
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