脳死判定 マテオの語り

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脳死判定 マテオの語り

 一方男だ。蘇生は成功したようだが脳はまだはっきりしない。しっかりした脳波は認められない。 レポートによると引き上げられた時にはもう心臓は止まっていたとのこと、それからここへ運ばれて蘇生が始まるまでに約二五分かかっている。 その間、心臓マッサージは一応されていたようだがどれほど効果的であったか。残念だが脳は本当に時間が勝負だ。 これはなかなか改善が難しい。しばらく待ってみたが、相変わらず脳波らしきものは認められない。ピリピリした雰囲気が覆ってきた。 「脳死判定が必要に思われるのでその担当を呼んでください」 「連絡します」 「今内科病棟でも判定をしているので、それが終わるまで一時間待って欲しいと言ってきています」 「仕方がない、了解だ」  内科も修羅場なのだな。およそこの病院はイタリアではない。 でもこの緊張感が俺は好きだ。仕事を本当にしている感じがする。 とにかく俺の初動対応は終わった。女は幸運にもドナーが現れて移植できれば助かるだろう。男は脳次第だ。
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