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「おい恭弥!そろそろ俺の番になる決心はできたか?」
出た。毎日こいつもよく懲りないな。
柊木 司。アルファ。金持ちの息子。うざい奴。
「ああ?ンなもん却下に決まってるだろーが。だいたい、下の名前で呼ぶのも許した覚えねえんだけど!!」
俺は清水 恭弥。……オメガ。
勉強も運動も苦手だけど、バースに囚われたくなくて、努力して成績上位を維持している。
「っ、お前はオメガなんだから大人しくアルファに守られていればいいんだよ!!バカヤロウ!」
「はあー??高校生にもなってバカヤロウなんて幼稚な言葉誰も使わねえって!お前の頭は小学生レベルかよ!!」
「んだとテメェ…!この俺が優しくしてやってるっていうのにお前はいつも喧嘩腰だな!」
「そっちこそ俺がお前と番う気がないことにそろそろ気づけよ!」
こいつとはバースについての考え方が全く異なるせいか、会う度にこうして言い合いになる。
一方は金持ち、一方はオメガの喧嘩を教室にいる誰もが手を出せずに遠巻きに見ているけど、いつも俺たちの喧嘩に終止符を打ってくれるのは……
「はいはい、ふたりともガキみたいな喧嘩はそろそろやめようね」
「「誰がガキだ!!」」
「そういうところだよ。ほら、恭弥おいで」
両手を広げて待っている由依の前に行く。
「もう子どもじゃねえんだし、そうやって待つなよ…」
「いつかは飛び込んできてくれるかなあ、と思って」
にこにことしているこいつは、麻田 由依。アルファのわりに穏便なやつで、俺らの学年の誰よりも大人っぽい。…どこかの誰かさんと違ってな!
「チッ、このアホちん!鈍感!!」
「てめえ、もういっぺん言ってみろよ!!」
そう言って立ち去った柊木を追いかけようとするけど、後ろから由依に抱きすくめられて止められる。
「大人になろうね、恭弥」
「……うん」
由依には勝てない。
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