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ガッチャッン!!!
機械人形の鈍い音で目を覚ますと、眼前には見慣れた景色があった。無数に積み上げられた本の山、絶えず動き続ける機械人形。あれはどうやって動いているのだろうか、今でも分からない。機械が動くためには何かしらのエネルギーを必要とするものだと思っていたのだが、あれらがエネルギーを供給されている姿を見たことがない。絶え間なく動いて白紙の紙を運び続けている。
周囲を見渡して、音が鳴ったであろう方向を見つけようとした。ああ、どうやら、あれのようだ。上半身だけの機械人形がいる。下半身はどこへ行ったのだろうか。あたりを見渡しても、見つかりそうになかった。
上半身だけの機械人形は自らの足で前へ進むことはできずに、その場でどうしようもなく腕だけを動かしている。哀れだ。あれはもう何もできない。
ただ規則的に動くだけの機械の群れの中で、孤立してしまったあの一体は誰にも助けられることはない。もうあれは、一人ぼっちだ。誰からも手を差し伸べられることはない機械に私の面影を見た。
あれは、今の私の状況そのものだ。私も一人になってしまった。
あの時のことを今でも夢に見る。アルが星になってしまった時のことを。星になるというのは「月」と呼ばれるこの場所からどこかに行ってしまうことだ。どこへ行ったのかも、星になると言われている理由も知らない。ただ、分かっていることは星になると、他の星々に会うことができるということだけだ。
「月」に取り残されたのは私だけ。あとは無感情な機械、紙と本の山。そして無造作に転がっているペンが一本。心を持っているのは私だけ。
アル、私はあなたに会いたい。あなたがいなくなってどれだけの時間が過ぎていっただろうか。
私はペンを拾い上げて、いなくなったアルのことを想いながら、ペンを紙上で走らせた。この場所で私には書くことしかできない。
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