心花

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 「智樹もやろうと思えばできるよ。私のこと、ちっちゃい子供に見えるんでしょう? それは人形に合わせたから。心花の世界に年齢なんて関係ないの。見たい歳で見ればいい。やってみなよ。ほら、20歳くらいの心花を見て……」  そんなことを言われても……と思いながらも、心花を見つめ直す。すると……。  「おおっ!」  そこには、若い女性の姿が。しかも、アイドルか若手女優と言ってもいいほどの美貌だ。  「どう? どんなふうに見えるのかなぁ」  心花が立ち上がる。いつの間にかTシャツにホットパンツという軽装になっていた。スラリと伸びた足が目を惹く。見とれてしまう智樹。  「ちょっと目がいやらしいですよ?」  心花が言う。智樹は慌てて視線をそらす。  「うふふ……」と笑いながら、心花がピッタリと寄り添ってきた。そう、20歳の体で……。  「いや、そのう……」  拒むのも悪いし、どうせ夢だからと智樹はそのまま彼女の肩を抱いた。  「嬉しい。やっと一緒にいられる……」  嬉しそうな心花の声。ふと、疑問に感じる。  本当に夢なのかなぁ……。  首をかしげながら、部屋の片隅を見る。そこに、開かれた段ボール箱があった。人形の心花が入るくらいの大きさだ。ハッとなり引き寄せた。中に手紙。実家の母からだ。  『元気でやってますか?  実は、この間の地震で裏の物置が崩れてしまったの。そうしたら、あなたが5歳の時に人形婚をしたお相手、心花が出てきたのよ。ずっと奥にしまわれていたのね。こちらに置いておいても仕方ないし、智樹の物だから送ります』  簡潔にまとめられた手紙。と言うことは……。  智樹は空になった箱と隣にちょこんと座る心花を順番に見た。  「まさか、本当に、本物の、心花?」  「あたりまえじゃん」  にこっと笑う心花の顔が、一瞬人形に戻った。
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