20人が本棚に入れています
本棚に追加
「智樹もやろうと思えばできるよ。私のこと、ちっちゃい子供に見えるんでしょう? それは人形に合わせたから。心花の世界に年齢なんて関係ないの。見たい歳で見ればいい。やってみなよ。ほら、20歳くらいの心花を見て……」
そんなことを言われても……と思いながらも、心花を見つめ直す。すると……。
「おおっ!」
そこには、若い女性の姿が。しかも、アイドルか若手女優と言ってもいいほどの美貌だ。
「どう? どんなふうに見えるのかなぁ」
心花が立ち上がる。いつの間にかTシャツにホットパンツという軽装になっていた。スラリと伸びた足が目を惹く。見とれてしまう智樹。
「ちょっと目がいやらしいですよ?」
心花が言う。智樹は慌てて視線をそらす。
「うふふ……」と笑いながら、心花がピッタリと寄り添ってきた。そう、20歳の体で……。
「いや、そのう……」
拒むのも悪いし、どうせ夢だからと智樹はそのまま彼女の肩を抱いた。
「嬉しい。やっと一緒にいられる……」
嬉しそうな心花の声。ふと、疑問に感じる。
本当に夢なのかなぁ……。
首をかしげながら、部屋の片隅を見る。そこに、開かれた段ボール箱があった。人形の心花が入るくらいの大きさだ。ハッとなり引き寄せた。中に手紙。実家の母からだ。
『元気でやってますか?
実は、この間の地震で裏の物置が崩れてしまったの。そうしたら、あなたが5歳の時に人形婚をしたお相手、心花が出てきたのよ。ずっと奥にしまわれていたのね。こちらに置いておいても仕方ないし、智樹の物だから送ります』
簡潔にまとめられた手紙。と言うことは……。
智樹は空になった箱と隣にちょこんと座る心花を順番に見た。
「まさか、本当に、本物の、心花?」
「あたりまえじゃん」
にこっと笑う心花の顔が、一瞬人形に戻った。
最初のコメントを投稿しよう!