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「今日はカレーだよ」
「わあ、いいね。俺も手伝うよ」
「じゃあ、玉ねぎ切って。心花、すぐ涙が出てきちゃうんだよ」
「へえ、そうなんだ? どーれ……」
「だめっ、切り口こっちに向けないでっ!」
「アハハ、ほんとだ」
「もう、智樹の意地悪っ!」
「イチャイチャしているところ悪いが……」
突然後ろから渋い声が聞こえてきて、慌てて振り返る2人。
「う、うわぁぁっ!」
「きゃあぁぁっ!」
同時に叫び声をあげた。
「そんなに怖がらなくても良いと思うんだが……」
ポリポリと頭を搔くおじさんの姿がそこにあった。よく見ると、それは……。
「藤岡さん? 何でここに?」
助けてくれたときに亡くなっているんじゃあ?
「藤岡? そうか、君にはそう見えるのか?」
「え? どういうこと?」
怪訝な顔になる智樹の横で、心花が「神様……」と呟いた。
「うむ。まあ、神の端くれだがね。実態がないから、君にとっては一番畏れ多い姿に見えるんだな。それはそれで良い」
神様? 藤岡さん? どっちかわからないが、彼はそう言って頷いた。
ぎゅっと智樹にしがみつく心花。
「心花のこと、連れ戻しに来たんですか?」
恐る恐る心花が訊いた。声が震えている。
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