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あまりの騒音に、耳が壊れそうになる。
目がチカチカするほどの光を放つ台の前で、皆虚ろな目をして玉が飛ぶ様を見つめている。それはまるで催眠術でもかけられた人々のようにも見えて、ぞっとした私は慌てて目を逸らした。
俯いて、ようちゃんのボロボロの靴だけを見て歩く。靴底に穴が開いている、薄汚れた赤のコンバース。
ようちゃんはパチンココーナーを抜けてスロットコーナーへと歩いて行く。迷わず進んでいるところを見ると、この店に来るのは初めてではないようだ。
慣れた様子で、スロット台の上に設置してある画面を操作する。私には何をしているのかさっぱりわからないが、ようちゃんは表示されたグラフを真剣に見つめていた。
何台かそうやって見て回った後、ようちゃんはとあるスロットの前に座った。当たり前のように手を出される。首を傾げると、「金」と一言。仕方なく3万円を渡す。ようちゃんは1万円を台の横に入れる。1万円は、待っていましたと言わんばかりにスルスルと飲み込まれていった。
ようちゃん、その1万円は私が稼いだお金だよ。
店がうるさいのを良いことに、小さく呟いた。
店内はあんなにうるさいと思っていたのに、しばらくすると慣れて何も感じなくなっているのが恐怖だった。
「当たらねえなぁ」
そうぼやきつつ、ようちゃんはまた台に1万円を入れる。
「姫花、カード貸して」
「カード?」
「銀行のカード。多分足りねぇわ、下ろしてくる」
そう言って手を出す。
本当は嫌だった。でもようちゃんに逆らったら、ようちゃんは大人気ないくらいにキレる。
どうしてそんなにお金がないのに働いてこなかったのか、聞いたことがある。職場でいじめられて鬱だったとか何だとか、もそもそと誤魔化すように言った後、何故か怒り始めた。
「お前に俺の何がわかるんだよ。俺の立場にもなれよ」
そのあと私が彼の機嫌を取るまで、口を聞いてもくれなかった。
渋々財布からカードを出す。せんきゅ、と笑顔で受け取って、ジャケットのポケットに入れた。
座る場所もなくスロットもわからない私は、ぼんやりと彼の後ろに立っていた。だが、通路の狭い店内では邪魔になる。後ろを通ろうとしたサラリーマン風のスーツの男性に、聞こえよがしに舌打ちされた。
手持ち無沙汰の私は仕方なく、うろうろと店内を歩いて回る。
ソファがいくつか置いてある休憩スペースを見つけ、そこで過ごすことにした。
自動販売機で温かいカフェオレを買い、ソファに座る。
妙にフカフカで座り心地が良いことに、なんだか無性に腹が立った。
さっきようちゃんに3万円渡したから、私の所持金は700円くらい。あとでATMでお金を下ろさないと。でも、残高がいくらだったっけ……
そんなことを考えているうちに、ソファがフカフカなせいか疲れているせいか、私はうとうとと眠りの世界に落ちていった。
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