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はっと顔を上げた。スマホを見ると朝の7時を過ぎたところ。どうやらいつのまにか眠っていたらしい。
目覚めると同時に思い出した。ようちゃんにキャッシュカードを預けたままだ。
気づいた瞬間に個室を飛び出して、駅前の郵便局へ走った。
ATMを利用する人々の列に並び、リュックから焦る手で通帳を取り出す。のろのろとATMを操作する老人に、いつも以上に腹が立った。
ようやく順番が来て、ATMに飛びつく。するすると通帳は機械に吸い込まれ、何かしらを記入した後に吐き出された。
ひったくるようにして、出てきた通帳を手に取る。
予想通りだった。残高は420円を残し、他は全て引き出されていた。
財布の中に700円、通帳に420円。全財産はそれだけ。どこにも行けず、何もできない。
ははは、とまた笑いが込み上げてきた。
笑いながら駅前を歩く私を、出勤中のサラリーマンや学生があからさまに避けて歩く。構わない。もはや失うものなど何もない。
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