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アイリス
蒸し暑い梅雨が過ぎて今度は痛いくらいの太陽が入道雲の隣で地面を照らしている。
いつも通りに学校を終えて帰路につく。
けれど今日は少し違った。
田舎なので周りは田んぼで遠くがよく見える。
首からお腹辺りまでボタンがある白いワンピース、黒く長い髪の女性が立っていた。
観光客か?この田舎にわざわざ観光しに来るだろうか。
近くを通るついでに少し気になりチラッと女性のほうを見る。
身長は自分と同じ170cmくらいだろうか、電柱に背中を付け、顔を下にして、片足をブラブラさせている。
人でも待っているのだろう、そう思うことにした。
通り過ぎてから五歩程度進んだ途端、女性が歩き始めた。
少しびっくりはしたがたまたまと自分に言い聞かせ歩を進める。
偶然、偶然だ、と自分に言い聞かせつつ歩く。
右に曲がる、左に曲がる。
それでも家の前までついてきている。
これは偶然ではない、何か意思を持っている、確実にヤバイ。
夏の暑さのせいではない、何か違う種類の汗が額を駆け巡る。
ポケットの中でカギを握りしめ、勢いよく扉を開け、すぐに鍵を閉める。
いつも通り家は静かだった、誰もいない。
急いで自分の部屋に行きカーテンの端を少しだけ持ち上げ外を確認した。
どうやら女はいないようだった。
「ふぅ」
椅子の上に座り、思わず大きめなため息をしてしまった。
それにしてもあの女は何者だろうか。
外に出るのが少し億劫に感じてしまう。
自室のドアの方をなんとなく見るとさっきの女が立っていた。
急いでその女から目を離し、スマホを取り出し知らないふりをした。
鳴りやまぬ心臓を無視して、ネットを全力で楽しむことにした。
「あの・・・・見えてますよね?」
終わった、ばれてる、憑りつかれて呪い殺されて肩が段々重くなって・・・・・・
体をぶるぶる震わせひたすら無視を続けた、いや恐怖のあまり頭が真っ白で何も思いつかないが正解だ。
「そんなに怖がらなくて大丈夫ですよ」
恐る恐る後ろをゆっくりと振り向いてみる。
そこには笑顔の女性がいた。
今まで見てきた幽霊とは異なっている。
まず体が透けていない、笑顔ができている、そして見た感じは完全に
人だ。
いつの間にか震えはなくなっていた。
一分ほど女性と目を合わせていると、女性が話を始めた
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